バンライフ仕様車を最強の防災対策車にする手引き:インフラ編

この記事はこんな人のためにある。

◉ どこかで災害があるたびに、なにかしなきゃとモヤっとする家族思いなあなた
◉ どのみち車を持って高い税金を払うなら、トコトン使い倒してやりたい(欲張りな)あなた

勢いで家を捨てバンライフを始めた。これには、人がやらないことをやりたいという退屈しのぎのほかに、もうひとつ大きな目的があった。それはいつなんどき何があっても快適に過ごせる防災シェルターを作ることだった。

そして実際にバンライフ車を作ってから暮らし始め、これは個人でできるレベルでは(万能とはいわないにしても)最強の防災対策になりうると感じている。

私は今までに神戸や大阪、熊本、広島、東京などに住んできた。どこも近年大きな災害に遭った地域(もしくは影響があった地域)だ。ただ幸運なことに災害時にはそれ以外の地域に住んでおり、被災したことは一度もない。そのためかいつも、次はきっと自分の番だという気持ちがある。

続編の「バンライフ仕様車を最強の防災対策車にするための手引き:衣食住編」と合わせて参考にして頂けるとわかりやすい(続編は1/5更新予定)。

おしながき

前編:インフラをととのえる

先にお伝えしておくが、通常家で使う設備をそっくりそのまま再現することはできない。基本的に全部不便になると思っていただいて間違いないが、人間慣れるもので、まったく問題なく暮らせているので安心してほしい。

電気

私の部屋には、家庭で使うものと同じ100Vのコンセントを全部で5口用意しているので、家にいるのと同じように電化製品が使える。コンセントの元になる電気はポータブル電源から使えるように配線している。

あまり深く考えず色んなところに散らばらせたコンセント(3畳の空間でこれだけ付けて、何するつもりだったんだ?)

ポータブル電源(界隈では略してポタ電といわれている)とソーラーパネルは、ともに中国のメーカーEcoFlow社のものを使っている。

ポタ電「EcoFlow DELTA MAX 1600」


なかなか勇ましいデザイン

400W据置型ソーラーパネル(剛性)

屋根上に乗せているのがソーラーパネル。ルーフキャリア(荷物を乗せる用の黒いバー)にネジを溶接して固定している。

ともに当時のものは廃盤となっているが、ポタ電の後継の製品(2000W)187,000円。ソーラーパネルは2枚で121,000円(2024年1月現在)だ。私は1枚だけ使って1枚は他に譲ったが、デリカカーゴと同程度の大きさのバンならギリギリ2枚載せることもできそうだ。

使い方はとてもカンタンだ(自慢ではないが、私は電気関係などまるでだめな理系女子)。ソーラーパネルに元からくっついているコードを、ポタ電につなぐだけだ。すると自動的に発電した電気をためておいてくれる。

ちなみに中国法人だが、日本に窓口があるためサポートは早く丁寧だ(サポートを活用したことがあるということは、それなりに壊れるということでもあるが)。

ポータブル電源でどれくらい家電が使えるか

1600Wのポータブル電源はどれくらい使えるか、ピンとこないと思う。私もそれほどしっかり理解していないのでザックリとだが、晴れが続けば生活に困ることは今のところない。雨が続けば当然電気がなくなり、寝ぐせが直せなくて困ることも多々ある。

ひとまず、いまの生活で使っている電化製品をぜんぶ並べてみるのがいいと思う。電気の必要な道具を日頃から少しずつ減らすよう心掛け、電気が少ない状態でも暮らせるように自分を慣らしておく。そして仕事など優先すべきものから使い、寝ぐせ直しは後回しにするかもしれないことは覚悟しておく必要がある。

私の日常使いの電力はこちら。

何時間使っても1600Wは使い切らなそうなのは伝わると思う。

  • ノートパソコン:30W
  • iPhone:20W
  • 照明(2台あたり):8W

(参考)本格家電はケタがちがう

  • 冷蔵庫(2ドア):550W
  • 車用エアコン(EcoFlow Wave):600W

照明器具

バンライフ仕様車には、天井埋め込みのスポットライトを使う人が多い。確かにおしゃれで良いのだが(なんだかありきたりなので)私はモロッコ風インテリアに合う壁付け照明をつけた。壁の裏で配線しているので、一見本当の家のようだ。

だが実際のところ、日常的には照明器具はなくてもいいかもと思うことも多い。夜は電球ではなくオイルランプを使うことがほとんどだからだ。火の光のほうがすんなり眠りにつける。

ただ防災を考えるなら、リスク分散のため明かりの種類はいくつか用意しておいた方がいいだろう。備え付け照明と、オイルランプ、ろうそく、(おしゃれさには欠けるが)緊急用のヘッドライトなどがあればひとまず合格点だ。

ガス

家庭でガスを使う場面は人によって色々だと思うが、車では唯一調理のときだけなので、カセットコンロとガスボンベで充分だ。

調理は慣れるまでかなり不便に感じるだろうが、それでもいつか出来上がるので大丈夫だ。コンロは1つだけでもいいが、我が家は気づけば3つある(だがよく考えたら、同時には2つまでしか使っていない)

必要なのはタンクだけだ。当初はそのあたりの公園にあるような水道で補充させてもらうことを考えていたが、これが想像以上にむずかしい。そう気楽に水を汲めるような水道はそう転がっていない。

そこで私は、全国の湧き水にお世話になることにした。意外にも水道を見つけるより数倍カンタンなのだ。探し方はもちろんインターネットで湧き水を調べるのでいいが、一番カンタンなのはGoogle Mapで「湧き水」と検索することだ。

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飲用水のタンク

最初は一番よく使われる20L用タンクを用意したが、すぐに問題があることがわかった。(霊長類最強でもないかぎり)女性がひとりで20Lの水を抱えるのはほとんどムリなのだ。すぐさま諦め10Lのタンクに変えた。

私が使っているのは、DODというメーカーのジミニータンクだ(今日のAmazonの価格で3,332円)。レバー式のコックからそのまま水道のように使え、止水もしっかりしている。今のところ不具合はない。

10Lタンクはこれくらいのサイズ感

ストックできるようであれば、水は多ければ多いに越したことはない。我が家はこのタンクを2個持っているが、もう少しほしいというのが正直なところなので、置けるスペースとの相談だ。

排水用タンク

最初はこちらも20Lのタンクを用意したが、結局使わなかったので処分した。それは排水する場所を見つけるのがむずかしいことと、そもそも20Lも排水が出ないからだ。また常に汚れた水を抱えて走っているのも、そう気分のいいものでもない。そもそも排水のでない生活を目指す方がよほどラクだと分かった。

通信

いまやスマートフォンは連絡手段として欠かせない。もし今手に持っているスマホの通信が全く使えなくなったら、誰にも連絡が取れないという人は大勢いるだろう。

また情報も、いざという時のために念のためウェブ以外から取れるようにしておいて損はない。

インターネット回線

国内の状況に関わらず使える衛星通信が、一番安定していると思われる。テスラのイーロン・マスクが持つ別会社、スペースXが提供する「スターリンク」だ。アンテナの真上に空が見えれば、世界中のどこでもインターネットが使える。(夜空を見ていると時々、スターリンクのものらしき衛星が列をなして飛んでいる)


アンテナはこんなの。電波を探して白い部分がウネウネ動くのが愛らしい

アンテナ(買い切り)と通信プランが用意されていて、ひとまずアンテナさえ購入しておけば、あとは使うときだけお支払いすればいい。月単位で支払えるというあたりが(2年しばりのサービスと違って)素晴らしいなと思う。

アンテナ価格は今日のところ公式サイトで33,000円、通信費は移動する人用のプラン「MOBILE」で9,900円/月だ。少し割高だが、今のスマホを最安で持ってこれを契約するのが一番いいと思う(特にバンライフ民が好む山の上は、国内回線の通信圏外が多い)。

アンテナは近頃コストコでも買えるらしいので、近々当たり前に一家に一台ある時代になるのかもしれない。

ラジオ

いざというときのために、インターネットを使わないで情報を得る方法も準備が必要だろう。やっぱりそういったときには今も昔もラジオが強い。

手回しラジオでもいいだろうし、ポータブル電源を使うなら回さないラジオでもいい。なにせその消費電力は0.1~10W(1時間聴いても1円以下だそうだ)。昔からある技術は省エネでいい。


(思った以上に長くなってしまったため)

続きの「バンライフ仕様車を最強の防災対策車にする手引き:衣食住編」も合わせて読んでもらえると、より暮らすイメージができると思う。

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