キッチンを持たないバンライフ仕様車で作る完全防災食の手引き

これはこのような人の役に立つ記事だ。

◉とにかく毎日の料理がめんどくさいあなた(100%共感)
◉バンで暮らしてるってあなた、ごはんはどうしてるの?と疑問に思うあなた(本当によく聞かれます)
◉防災を考えて備蓄を、と言われても何をどう選べばいいかピンとこないあなた
◉結局からだにいい食事ってホントのところ何なの?と思う(情報過多に悩まされる)あなた

なんの自慢にもならないが、私は料理が苦手だ。

とにかく毎日夕方が来るのが憂鬱だった。

一方これは自慢だが、誰よりも美味しそうに食べるのだけは得意だ。なので「美味しそうに食べてくれたら満足」というような気のいい奥さんが来てくれることを、長年待ち望んでいた。ところが車で暮らし始めてから紆余曲折あり、事情が変わった。

我が車にはキッチンを作っていない。キッチン台も水道も(もちろんシンクも)ないのだが、美味しいごはんをカンタンに作れるようになった。しかも少しの憂鬱さも感じずに。

今回紹介するレシピを実践するメリット

  • 道具が少なくて済む
  • =片付けも少なくて済む
  • ストックの種類も少なくて済む
  • 栄養面もばっちり
  • 手間いらず(非常時に実践するのもカンタン)
  • 飽きない

どう考えても(料理に手間をかけたくない私のような人には)いいことずくめ。

この記事は、バンライフ仕様車で食事を作る実践的な内容なのはもちろん、いつでも誰でも再現できる現実的な献立として紹介したい。できるところから実践してもらえると色んな面で安心が得られると思う。

おしながき

調理の道具

必要な道具はこれだけだ。

  • カセットコンロ(1口で充分)
  • お鍋(大小3つくらい)
  • お箸(菜箸と兼ねる)
  • キッチンはさみ

冷蔵庫はない。基本の食材は乾物だけなので、あるに越したことはないがなくても良い。(クーラーボックスは持っているが保冷剤を常に凍らせることはできないため、通常はただの食材庫となり下がっている。)

お鍋はアウトドアメーカー・キャプテンスタッグのEasyコンパクトクッカーセット(12,000円)。


+取っ手つき

お鍋とフライパンはテフロン製。お米も鍋炊きだが、焦げ付かないのはとてもありがたい。

一汁三菜の呪縛

料理が苦手であろうと、長く車で旅をするならキッチンはいるだろうと、当初はいずれ作ろうと思っていた。ところが結果的にキッチン無しで問題がないことがわかった。

ところで日本食には、一汁三菜という考え方がある。日本のおかあさん(もしくはおとうさん)が毎日毎日「色とりどりのおかずが数種類用意された、豪華そうな食事」を作らなければならないと思い込まされてきたのは、この一汁三菜にあるに違いないと、私は以前から忌々しく思っていた。

和食の献立の基本だという一汁三菜は、一点の汁物と三点のおかずで成り立つ。汁とご飯のほかに、肉料理、煮物、焼物で三菜。香の物(お漬物)は三菜とは別に用意された。バンでの食事を考えたときに改めて調べて知ったのだが、それは室町時代の武家の饗宴向け料理である本膳料理というものから来ているのだそうだ。

なんとか日頃の食事でラクをできないか考えていた(怠慢な)私に、これは朗報だった。一汁三菜とは一見質素そうな顔をして、実はハレの日の酒飲みのための食事だと知ったのだ。

やはり毎日たくさんのおかずを作る必要なんて無い。そうして私は、キッチン用に引いていた図面を破り捨てた。

一汁一菜で決まり

その後の試行錯誤の末、キッチン不要の万能バンライフ食は「一汁一菜」と定まった。内訳はこんなかんじだ。

これは一番簡素なバージョン

基本の一汁一菜

玄米(時々白米)

自然栽培で育った無農薬米を、基本は玄米でいただく。時々精米して白米もいただく(これに塩をパラッとかけるだけで結構なごちそう)。一番大事なのは、せめて無農薬のもので、できれば無肥料の玄米を手に入れることだ。

味噌汁(具なし)

昆布と、カンナで削った鰹節で出汁をとる。顆粒だしのあれとは全く別物で、香りがすごい。昆布は奥井海生堂の蔵囲昆布、鰹節は坂井商店の本枯節が定番。どちらも本格割烹も御用達の逸品だが、手軽に楽天市場で買わせて頂ける。

昆布の佃煮

味噌汁の出汁をとった後の昆布を切り刻んで、みりんと醤油で少しだけ煮たもの

おかか

味噌汁の出汁をとった後の鰹節を、少しの醤油で炒ったもの。出汁として活躍したあとにしては、食べごたえと旨味がすごい。完全におかずとして認定できる存在感。

お味噌汁の出汁の材料を活かすため一汁二菜となるが、これでほぼ生ゴミが出ないスーパーエコロジーな一食の完成だ。これに、旅先の美味しそうなもの(お造りが多い)があれば足すこともある。この場合は結果的に一汁三菜だが、これくらい肩肘張らなければわるくない。

調味料

醤油

いまは師匠お手製の醤油を頂いているが、その前は和歌山の老舗・湯浅醤油。(誰がなんといおうと添加物のないものを使う)

お味噌

特にブランドは決めていないが、必ず発酵するまで手間を掛けられた、自然栽培か有機栽培の大豆で作った味噌。今は熊本の発酵農園のもの。

昔ながらの作り方の一番塩が理想。いまは「伏高の五島灘の甘い一番塩」を愛用。

みりん

いまは「角谷文治郎商店の三州三河みりん」。みりん風調味料との食べ比べを一度してもらいたい。きっとびっくりする。

いざと言う時にも効く食材ストック

我が家の基本メニューの材料は以下の通りだ。品目が少ないので管理がラクだし、これでしばらくは充分生きられるという安心感がある。

お米

玄米を20kgを一度に購入する。我が家は1食あたり1.5合くらいなので、3食食べるとして4.5合(675g)。1ヶ月分で20kgほどになる。備蓄が一番減っているタイミングでも半月分は在庫するよう調整しているので、農水省が勧めるところの充分(3日~1週間)なストックはある。

昆布・鰹節

枯渇しない程度に、ひとつは新品のストックがある状態を意識している。材料にこだわる分買えるところは少ないので、次に向かう方向にあるコンビニや運送会社の営業所で受け取れるように、通販で買い足すことも多い。

栄養問題

一汁三菜がいい理由を調べると色々出てくるが、(私の偏見がつまった目から見ると)それぞれがそれぞれの立場で言いたいことを言っている感じがする。たとえばいろんな食材を取ることで栄養バランスが取れるというが、なぜ食材の種類が増えたら栄養バランスが良くなると言えるのだろう。

一番納得がいくのは、昔の日本人(エライヒトではなく庶民)が、一汁一菜に近い質素な食事で強靭な体を保っていたという説だ。なんでも60kgの荷物を背負って毎日40km歩くほど体力があったらしい。(そして栄養バランスを考えているはずの現代人でこれができる人はなかなかいない)。

ということで、昔の人にならえば栄養は問題ないはずだ。そして実際に私の食の師匠がおっしゃるには、玄米は完全栄養食で、基本的にこれを食べていれば他のものは要らないそうだ。

後片付け

この献立では油をまったく使わないので、そもそも洗剤を使う必要がない。普段の後片付けの手順はこうだ。

手順
軽く水ですすぐ
手順
ペーパーで一度拭く
手順
食品用アルコールスプレーを吹き付ける
手順
手ぬぐいで仕上げ拭きをして完了

アルコールにはハッカ油を混ぜているので殺菌効果もある。すすぐ水は飲料と兼ねている貴重な湧き水なので、最小限の使用を心がける。そしてわずかに残ったすすぎ水は、小さいボトルに入れておき、ご迷惑にならない場所があった時に流す。ただの水(少しばかり玄米のぬかとかその程度がまざっただけ)なので、実際のところそのへんに流しても何の害もない。

キッチンなしで調理する手引きまとめ

ちゃんとしたお米とお味噌汁さえ摂っておけば大丈夫なんだ、とわかってから、食事の準備の苦痛から解放された(そして本当にこれ+αくらいしか用意しない)。みんなこうすればいいのにと心から思う。

そのため周りの知人友人に勧めて歩くのだが、やはり一般的にはこれでは物足りないと感じるようだ。だが、そこを一旦置いておいて、まずこの基本に慣れることが大事だと思う。栄養面は基本のもので賄えるのだから、+αで何か美味しいものが手に入ったら、それはただのおまけだ。幸せな気分になるためのスパイスにすぎず、必要なものではない。

炊きたてごはんに塩をかけたシンプルな美味しさ、ぜひ味わってほしい

食事を楽する方法はいくらでもある。レトルト、カップ麺、スーパーのお惣菜、コンビニごはん。

どれももちろん(一見)おいしいが、毎日毎日カップ麺では味気ないだろうし、カップ麺の残り汁の処分にもきっと困る。そしてなにより、それではなんだかセルフイメージが下がりはしないだろうか(私はジャンクなものを欲したときはいつも、吉永小百合さんならこんな食事をするだろうか?と考えるようにしている)。

都会のネオンに四六時中照らされるときっと体を壊してしまうが、一方で自然の中にどれだけいても飽きることはない。食に関しても同じで、人工的な食事はすぐ飽きる一方、昔ながらのシンプルなごはんとお味噌汁は、毎日食べても飽きることはない。

摩衣
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おしながき