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始まりに、
いくらかかったのか

¥2,700,000 → ¥50,000

いまは海外をまわっているが、この生活の元を辿れば、家を手放してバンで暮らし始めたところから始まる。3年半ほど、固定の家がない。

今回は、この「始まり」にいくらかかったのか。

今は元々キャンピングカー仕様になっている車を所有しているが、初代は国産バンを自分でリノベーションした。そもそも10数年のペーパードライバーが1ナンバーの商用車を買うところに始まり、使い勝手の想像がつかない中で、まったく無意味な位置に配線してしまったりなど、学びの多い「大きなおもちゃ作り」のようなバンリノベだった。

このリノベのモットー。ベース車は内装をボコボコにしても申し訳なく思わない程度の車から探すこと、材料は贅を尽くすこと、あとは勢い。この3つを決めて始めた。

内訳はこう。

乗り出し70万円からのスタート。あとは、贅を尽くした材での改装に100万~130万くらい。その後、寝床としてソファを奮発し、合計270万円くらいになった。

その車は、この旅の直前に手放した。乗ったのは2年くらいだと思う。「内装をボコボコにしても申し訳なく思わない程度の車」だっただけあって、エンジン周りに初期から不具合が多く、二束三文かとも覚悟していたが、買い取り屋さんは5万円をつけてくれた。

270万かけて、戻ってきたのは5万円。数字だけ見れば、ずいぶん割に合わない話だ。

さらにかけていたもの、それは。

でも、この数字がすべてではない。同時に「多額の浪費」に気づいた。

部屋を手放し、車に住み替えたときのこと。狭い車内に、それまでの暮らしをどうにか詰め込んで出発したものの、案の定うまく収まらない。

西神戸の駐車場。息子は日中は保育園に通い、私はその間ずっと、車内で「荷物を減らす」という名の自問自答を数日、繰り広げた。

そこで気づいたことがある。手放したくないものが、ほとんどなかった。過不足なく言っても、手元に残ったのはこれだけだった。

譲ってもらった石油ストーブ。3月の車内で凍えないために要る。ガスコンロと鍋。食べるために要る。パソコン。フルリモートの会社員だったので、これがなければ生きられない。あとは洋服と化粧品くらい。これも、まあ要る。

「要る」という用途以外のものは、なにもいらなかったんだなぁ、と。突き詰めると「不要」なものに、どれだけのお金を掛けていたことか。

5日かけて、車内はおおかた空になった。清々しいような、少し寂しいような気持ちで、私は「もう、モノなんて持たない」と誓った。

「寝床としてソファ、70万」の評価は。

その決意から5日後、ハンス・J・ウェグナーのデイベッドを清水買い。70万円。誓いを立てた舌の根も乾かぬうちに、だ。

言い訳するなら、車内で寝るためのものだから「生存に必要」と言えなくもない。ただ、70万円のバンに乗せるには、あまりに過剰だった。

それでも、これがいい、と思った。生存のためだけに残したものの中に、ひとつだけ「好きだから」で選んだものが入る。たぶんここから、今の暮らしが始まっている。

そのソファは、売らなかった。今は知人が預かってくれている。いつか拠点にしたい場所ができたら、そこに置きたいと思っている。その場所が日本だとは限らない。