瀧原宮は決して混雑しない伊勢神宮だった

奥伊勢の静寂の地より|2023.09.07

日本中で話題のパンケーキ店。都心にある1号店は常に長蛇の列。その一方、最寄り駅から徒歩40分掛かるものの眺望のいい15号店は、お客はまばらでいつも待たされることはなく、席に着いてからもゆったりした時間が過ごせる。

伊勢市にある伊勢神宮と大紀町にある瀧原宮は、そういった類の関係にある。

伊勢神宮は内宮・外宮のほか、別宮など含め計125ものお社を擁する。今回訪れた瀧原宮は内宮の別宮のひとつで、内宮より南西に40km、車で40分ほどのところにあり、電車なら最寄り駅から徒歩30分もかかる。東京観光のついでに寄るには遠すぎる東京ディズニーランドさながら、伊勢観光のついでに寄るような場所ではない。

この立地なので、言わずもがなこの瀧原宮は「お客はまばら」であり、「いつも」「ゆったりした時間が過ごせる」、知られざる伊勢神宮なのである。

ところで先に断っておくと私は特段、神道仏道に詳しくない。興味も人並み程度だ。偶然通りかかったそこが有名神社仏閣だとしても、それだけの理由で立ち寄ることはない。

だが時々、ここは行っておくべしと直感がはたらくことがある。瀧原宮へは20年来の親友の勧めで訪れた。彼女は高名なボイスセラピストで直感に優れ、「氣」の良い場所を熟知している。彼女の勧めであれば間違いない。

事前調査でわかったのは、瀧原宮は内宮の配置とそっくりに作られていることから、数ある別宮の中でも特別といわれていること。大鳥居をくぐると森に囲まれた参道、その脇に清流、その先にお社が鎮座する。そのお社は全部で4つあり、神の序列の順に参拝することが推奨される。

だが私にとってそれらはどちらでもいいことだった。重要なのは、ここには太陽を神格化したという天照大御神(すなわち並の神ではなく、かなり上位の神)が祀られている、という事実だ。日頃から彼女には発電に際してとてもお世話になっている。失礼の無いようにすべきだ。

鳥居から一歩足を踏み入れると、深い森が凜として神々しい。残暑はどこへいったのか、空気はひんやりしている。ひとけのない長い参道をゆっくり進むと、脇には清流・頓登川が静かに流れている。そこに佇んでいるだけで、俗念にまみれた自分が浄化されていくようだ。

すると向こうから、年頃は私とほど近い、姿勢の整った女性が歩いてきた。すれ違いざまに彼女は、爽やかかつ慎ましい笑顔でおはようございます、と言った。いつもここにお参りに来ていますという風情の、凛とした美しい女性だった。やはりここには浄化作用があると確信する。

それからしばらくして、完全に浄化された美しい私は、清々しく神々への挨拶を終えた。朝8時に到着したのだが、気づけば昼過ぎになっていた。

有名な神社仏閣は頼もしい存在だが、相応に人出があるため多くの人の念を吸っていると聞く。その反面この神社のように人が少ないところなら、この場所本来の空気を吸うことができるかもしれない。

天照大御神に清々しい気持ちで挨拶をしたいのであれば、近鉄特急・伊勢志摩ライナーに飛び乗るのではなく、速やかにレンタカーを手配することをおすすめしたい。

摩衣
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おしながき