お金は、いちばん「軽い」コスト
いま、「43歳頂点論」という本を読んでいる。角幡唯介さんの新書で、「人間は43歳前後が頂点」だ、という話だ。
体力は年齢とともに落ちていき、経験値は上がっていく。その二本の線が交わるところ、総和がいちばん大きくなるところが、だいたい43歳前後。だから人は、その頃にいちばんいいパフォーマンスができる可能性がある。角幡さんは、それを冒険家たちの生き方から書いている。
この本を手に取ったのは、「おや、この人生の頂点は今なのか…」と目についたから。ただ、冒険家のように常に攻めた生き方をしているわけではないので、半分くらいは興味本位だった。
ところが、自分事に置き換えて読んでいると、途中からまんまと「まさか私も、やっぱりいまが頂点なんだわ」となった。
私はいま43歳で、8歳の息子とふたりで旅をしている。考えてみると、この旅ができたのは、3つのものがたまたま同じ「いまこの時」にそろったからだった。
- 旅費を自分でまかなえること
- 子どもを連れて見知らぬ国を歩けるだけの、気力と体力があること
- 息子が「旅の適齢期」であること
8歳は、子連れで海外を旅するにはかなりいい時期だと思う。
赤ん坊では覚えていないし、もう少し大きくなれば、置いていけないものが増える。多少の個人差はあっても、8歳という年齢には、子連れ旅としての「旬」がある。
旅にいくらかかるのか、と聞かれることは多い。一日いくら、一ヶ月いくら。数字にすれば分かりやすい。
でも実際には、お金以外にも「かけているもの」がある。
お金は使えば減る。でも、働けばまた戻せる。
一方で、3つの条件が重なっているこの時期は、いちど過ぎたらもう戻ってこない。私の体力は落ちていくし、息子は大きくなる。
来年の私たちは、今年の私たちには戻れない。
別の人生を選ぶとき、かかるものはお金だけではない。
私と息子はそれぞれ、いまという時間をかけている。それは完全に「いま」しか使えない、買い直せないものだ。
延々旅を続けることは、たぶんできる。
でも、「続けられること」と「いまが続くこと」は、べつの話。
そんなことを考えていたら、息子が「日本に帰ったらこれ食べたい」と言って、リストを書いてきた。
「日本に帰りたかったら、いつでも帰れるからね」と言ったら、
「いまはまだ帰りたくないんだよ」
と返ってきた。
ほんまなん?
と言いたくなるが、息子もたぶん、なんとなく分かっている。
こんな日常にも、期限がある。