前回は、「思い込みを一旦置いて、自分にとって必要かどうかを考えてきた」と書きました。
若い頃の私は、とにかく「自由」という言葉に惹かれていました。その理由はうまく言えなかったけれど、とにかく今の場所ではないどこかへ行きたかった。
「自由になりたい」と願っていた頃、 その自由は「何かを得ること」だと思っていました。それは資格を取ることだったり、お金をたくさん貯めることだったりします。
でも実際は、少しずつ「手放すこと」のほうが、よっぽど大きな変化を生んでくれたように思います。手放すべきなのは「思い込み」の数々でした。
あたりまえとされる価値観、 うまくできて当然という無意識の自分への期待。それらを手放していくことで、ようやく自分にとってのちょうどいい暮らしが見えはじめた感触があります。
仕事をどうするか、住まいをどう選ぶか。家族との距離感、時間の使い方、お金との向き合い方。知らず知らずのうちに「こうあるべき」という前提で生きていた気がします。

その変化のきっかけは、息子の誕生でした。想定はしていたけれど、想像以上に思い通りにいかず、「わたしが頑張らなければ」「ちゃんとやらなければ」と、心も体もすり減らしていました。
そんなとき、母がふとこう言ってくれました。
「孫はもちろん可愛いけど、まいが一番大事。まず、自分に無理をさせないことを大事にしてほしい。」
その言葉に、私はハッとしました。私が「ちゃんとしなきゃ」と思い込んでいたのは、母親としての自分。でもまず守るべきは「わたし」自身だったのだと、母が教えてくれたのです。
あの日から、私はいろんな「前提」を一つずつ見直すようにしてきました。
持ち家を持つこと、フルタイムで働き続けること、この年齢ならこれくらいの貯蓄を、子どもがいるならこうあるべき、というイメージ。「わたし」が「わたし」でいられるバランスを取ろうとしていたのだと思います。
何かを手放すたびに、少しずつ、身軽になっていったように思います。本当に欲しかった自由は、「こうしなきゃ」を手放した先にあるのかもしれない。
私たちはみんな、気づかぬうちに何かを“前提”として握りしめているのかもしれません。あなたにとって、それは何でしょうか?
次回はそんな「思い込み」のひとつ、「仕事」について振り返ろうと思います。